4/2 忙しい冬が終わり、春スキーの季節。

ガイド3人で北アルプスへ。午前の天気が悪く、昼過ぎ入山。小雪チラついている。

Co1200からスキー。途中でデブリを超える。

ワサビ平小屋。今はクローズしており、登山者の影はない。
帰路で小屋番が来てたので。GWに備えて準備するのだろう。

先行の登山者いるが、小池新道登山口あたりでテント泊にする。
近くに川もあり、平らで快適。
この夜は星空が美しかった。満月が見えた。

4/3 夜明けと共にスタート。秩父沢から大ノ乗越を目指す。
美しいカールに古いデブリがあり、数日前の湿雪によるものと思われる。
先行の登山者は鏡平へ行ったようだ。

一気に標高を上げると、槍穂高連峰の稜線が見渡せた。
剣もカッコいいが、こっちはもっと良い。滑りに行きたいが、今回はお預け。

双六沢へ滑る。北面のため固い。
ジャンプターンを駆使して滑るが、なんせ荷物が重すぎる。7泊で22kgである。

Co2100で水が出ていた。今年は雪が少ないとはいえ、この標高で水が出るのは予想外だ。
暑いので飲み水に困らないのは助かる。
双六沢左岸を登る。雪も緩んで登りやすく快晴。

山頂からは白い槍穂が見えた。昨日の降雪が白銀の世界を作っている。

三俣蓮華まで稜線を滑る。岩でつまずき、派手に前転。ピカリンはウォークモードで滑っている。すげぇ。

後方に槍穂、右に常念岳、前方にワリモ(割門)、左に黒五(黒部五郎岳)。まさに大展望。山頂からは水晶・薬師が姿を見せた。

小屋のすぐ上の平地でテント。鷲羽ビューな最高のテン場だ。
山頂直下にスラフが発生したので、念のため少し離れておく。

夕日に照らされた槍がかっこいい。荷物が重く普通に疲れた。すぐ眠りにつく。

4/4 東の空に朝焼けが見える。美しいが、荒天の前兆だ。
テントを撤収し、移動開始。午後から強烈な南風がくるので、三俣蓮華の北にある樹林へ逃げる。

途中、三俣蓮華小屋を見学。
冬季小屋として開放されていたが、一昨年何者かに荒らされてから閉めているようだ。自分の遊び場を自分で奪うのは本当にやめてもらいたい。

気象データが欲しいので、ピカリンが鷲羽山頂へ向かう。
残った我々は樹林でテントを張ることにした。今夜は 40m/sの最大風速が来る。ハンパな所だとテントごと破壊されて終了となる。
更に沢まで落とすと祖父岳からの雪崩で全滅する可能性がある。場所選びは本当に難しい。

Co2400あたりに樹林に囲まれた平地を見つけた。
枝沢が近く水汲みが楽で、本流を挟むので雪崩も問題なし、黒五と鷲羽が眺められる最高のベースだ。
木の近くにライチョウのフンが大量に落ちている。彼らもココで暮らしているのだろう。少しお邪魔します。
整地しつつ切り出したブロックで壁を作る。防風林があるとは言え油断できない、可能な限り頑丈なテン場を作った。
右に回り込んだ所にトイレも新設し、完璧である。
まだ9時だが、本日はここで停滞することにした。少しずつ雪が降り出し、夜にかけて雨に変わった。稜線から暴力的な風音がする。
日が沈むと気温が上昇し、積み立てたブロックが崩れていく。雪洞泊にしていたら全崩壊していたかもしれない。

4/5、ストームが過ぎ、太陽が顔を出した。
標高が高い所では湿った新雪が積もり、雪崩リスクが高い上に板が走らない。
滑走というより歩きメインのツアーにした。

黒部川源流を下る。新しいデブリができており、強行突破。
祖父平で中州に入ってしまった為、スノーブリッジを渡渉、落ちたら雪解け水にドボンだ。

ここで水を補給。黒部源流の水はうまい。

祖父沢を詰め上がる。

雨の影響か、所々に穴があいている。
誤って落ちると水洗トイレ。危なくて板が外せない。

1時間ほどで祖母岳に到着。
北アルプスの名峰が眺められる絶好のスポットだ。久々のピークなので電波を拾うが、ソフトバンクは繋がるがドコモは繋がらない。auに変えようかな。
雲ノ平山荘から水晶岳を眺める。初めての雲ノ平。

ハイマツの茂みにはライチョウが隠れていた。
上空にはクマタカと思われる猛禽が飛んでおり、そちらを警戒しているのだろう。
スキーを履いたホモサピエンスには目もくれなかった。

北面の沢を落とす。1Pで右に右にトラバース。
3本目の沢でドロップし、左にトラバース。ピカリンの見事なルーファイで、事無きを得た。
ガイド料を払ってもいいくらいの内容だ。

最初の沢を下から見上げると、急斜面どころか氷瀑になっていた。
滑っていたら確実に詰んでいただろう。

シールを付け、シラビソの森を歩く。今年は雪が少ないため、小さな沢でも渡渉が要る。この沢は水晶池から流れているようだ。

隠れるように高天原山荘があった。この辺りは雪深く風が強いので、防風林が必要なのだろう。よく考えて作られている。
GPSを頼りに更に奥へ。薄い硫黄の臭いがする。

11時頃、高天原温泉に辿り着いた。
残念ながら湯は抜かれていたが、源泉で足湯を楽しめた。

日が高いと暑いので、2時間近く昼寝をする。
汗で濡れたブーツもすっかり乾いた。

帰りの岩苔小谷が穴だらけなので、登山道から水晶池に上がる。登山道をトラバースすると、沢の上流部に出た。
左岸に熊のような巨大生物が見えたので、確認も含め右俣に入る。ただの大きなカモシカだったが、何を上げたら熊と間違う程大きくなるのかと思う。

形の良いカールを450M登る。いい感じに雪は緩んでおり登りやすい。
別に急ぐ必要はないので自分のペースで登る。1時間ほどで岩苔乗越に着く。

折角なので祖父岳に登って電波を拾ってみた。
北アルプスの峰々が全方向に見渡せる展望の良さと、ドコモでもアンテナ4本立つ程の電波があった。

程よく冷えてきたので南側のカールにドロップした。
気持ちのいいザラメを滑走し、リグループ。そのままテントに向けて一気に滑り、本日の大冒険を終えた。
テントの周りにはライチョウの新しいフンが落ちていた。

4/6、ライチョウの鳴き声で目が覚める。
放射冷却で雪面はガリガリになり、ジャンプターンで下ったら板が外れた。

昨日のデブリも固くなり、非常に危ない。
板のコントロールも難しく、なかなかヤバいコンディションである。

五郎沢でシールを付け、緩やかな斜面をゆっくり上がる。

沢の穴からは五郎沢の清流が見え、イワナが泳いでいた。
スキーシーズンが終わるとすぐに沢登りだろう。仕事に遊びにと忙しい夏になりそうだ。

狭い右俣を詰めると、急に視界が開けた。黒部五郎岳東面に広がる大カールだ。
今回の山行では最も大きいカールだろう。魅力的な滑走ラインが何本も見え、どこを滑っても楽しそうである。

カール内を奥まで歩き、山頂の少し右の斜面を登る。かなり急なので途中から板を脱ぎ、シートラに切り替えた。

雪が緩んで登りやすい為アイゼンは必要ないものの、かなり急。コルに出るのが大変だった。

再び板を履き山頂を目指すが、北面に出ると再びガリガリになる。
スリップしたらゲームオーバーと思われる斜面で行き詰まり、慎重に板を脱ぎ再びシートラ。

少し歩くと槍穂がバッチリ見える山頂に着いた。午後から下り坂とは思えない程の好天だ。
薄い雪にハイマツが埋まっているらしく、わかちゃんが踏み抜いて落ちた。

山頂からの滑走ラインを考える。ダイレクトに落とせるスティープラインがあるが、3人で滑るには少し狭い。
ここはコルまで戻り夏道沿いを滑る事にした。
見下ろすと垂直に近い大斜面。一番手を滑り、気持ちのいいターンを描けた。
全員集まった所で五郎小舎に向けてグループラン。少し固めのザラメはよく滑り、メローな斜面なのにスピードが出て気持ちいい。最高のロングランができ、稜線から小舎まで10分程で着いた。

ここから Co2550 のピークに上がる。
五郎沢を下ると帰りが大変になるので、北斜面を滑って黒部源頭に落とす。

朝滑ったデブリの少し下流に出る。
気温上昇による全層雪崩に注意しつつ、ベースまで30分の距離だ。テン場に戻るとポカポカ陽気が残っていた。
昼寝をしながら濡れたシュラフやブーツを干す。停滞とはまた違う、まったりタイムも山には必要だ。

日が沈むころ、2羽のライチョウが飛びながらケンカしていた。彼らも夕食なのだろう、ダケカンバの新芽を食んでいた。

4/7。テント生活にも慣れてきたが、下界で焼肉を食う夢を見た。
山は好きだが、やはり街は素晴らしいと思っている自分が憎い。
この日は湿った降雪からの大寒波。山には行かず、レストとした。
ただ寝て茶を飲む。何もする事がないからこそ、深く考え、話す時間もできる。下界に降りるとまたデジタルと向き合う日が来るだろう。
だから貴重なのだ、何もしない時間は。15時を過ぎたころ、湿雪は乾雪に変わり、吐く息は白くなった。

4/8 空は晴れていたが風が強く、外は氷の世界に覆われていた。
テント内はカリカリになっており、霜取りから朝が始まる。

4日間過ごしたこのベースともお別れである。ガチガチに固まった地表にちょっと積もった新雪を頼りにしてハイクアップ。

テン場のすぐ上にライチョウのメスがいた。
我々を警戒しつつもすぐ近くにいたのだろう。特に逃げる様子はなく、じっと風に耐えている。
ありがとう。お邪魔しました。

三俣蓮華岳を目指す。稜線は凄まじい北風なので、山頂の少し南を走る登山道を目指す。

本日から好転するはずの天気だが、真冬かと思うくらいの寒波が体を叩いていた。
風に耐えながら、固まった雪面をジワジワ登る。

登山道をトラバース。
こちらは風は弱い者のスラフができており油断ならない。大きな雪崩は来ないだろうが、一応警戒しながら双六山荘を目指す。

双六山荘に到着。
休みたいところだが、風が強いのでとりあえず双六沢に落とす。

登りとは逆の双六沢右俣。
ほどよい緩みの雪と斜面が滑ってて楽しい。二俣まで一瞬で降りてこれた。

ここから本日最大の難所にして、この旅最後の登り。
大ノド乗越まで登るのだが、急斜面な上に北側なのでものすごく固い。
とてもシールでは登れないので、借りてきたアイゼンにチェンジ。

標高差350M程度だが、とにかく急。
まだ9時なので急ぐ必要もなく、ゆっくり高度を稼ぐ。

全員到着。
往路でここに来た時と同じく。槍穂の稜線が素晴らしい。

雪面にムラがあって滑りにくいが、悪くはない。

ワサビ平に向けて一気に高度を落とし、30分ほどで本流まで着いた。
さっきまであの上にいたと思うと感慨深い。
あとは消化試合。新穂高まで一直線だった。
7日間の間にずいぶん雪は減ったが、やはりスキーの機動力は強い。

昼過ぎ、新穂高に到着した。
予備日を1日残す形となったが、停滞で爆食いしてしまって食料はほぼカラ。
何より初めての6泊山行だったため既に満足だった。
とにかく下界の温泉に入って肉と米を食いたい。

平湯温泉で汗を流し、松本の蕎麦屋「松花」で山賊焼き定食を注文。
勢いで食べたかったが、長期山行後は胃が小さくなるためなかなかキツかった。
とても有意義な山旅だったと思う。
さすが妙高のスキーガイドでは最強格と言われるピカリンだが、教わることは多かった。
天気が悪そうだから山に行かないではなく、停滞も含め山にいることは面白いというのを学んだ。
ここから来年の冬に繋げられる山行もあるだろう。ぜひとも経験を活かし、来年は長期山行に挑みたい。

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