沢仲間のダイチと梅花皮沢を遡行してきました。ちなみに「かいらぎさわ」と読みます。名前の由来は戦国時代、刀の装飾に使った「鰄」から来ており、研ぐと梅の花のような美しい模様が出る事からつけられたそうです。
梅花皮沢は途中で登山道(破線)のある石転び沢と強烈なゴルジュを持つ滝沢に分かれてますが、今回は滝沢を登り石転び沢から下山する計画です。
実は石転び沢は今年4月にスキーで単独滑走しており、来るのは半年ぶり。ちょっとノスタルジックになります。
前回は梅花皮荘のゲートが開いていなかったためスキーを背負って車道を2時間歩く羽目になりましたが、今回は車で飯豊山荘まで行けるので楽です。

眠気に負けた私が五泉市で撃沈したため、6:15到着。それでも早い気がしますが、かなり高難易度の沢であるため杞憂ではないと思います。すでに駐車場は登山客でいっぱい。どうやら皆さん、梶川尾根から北股岳山頂を目指すようです。
石転び沢からも行けるようですが、かなりマイナーみたいですね。
最初は快適な林道を歩き、堰堤を超えたら登山道。春に来たときは整備されてませんでしたが、夏に来ても相変わらず整備されていません。破線ルートなのが頷ける。

途中で登山道から沢に降り、滝沢出合に着きます。
綺麗な窯を持った6M滝がお出迎え。いきなり難しそうですが左岸のバンドをフリーで登ります。一応ロープ出しましたが、トラバースなので意味ありませんでした。

しばらく平凡な沢を歩くと、いきなりハイライトが現れました。
6段160Mというビッグスケールの梅花皮大滝です。両岸は完全に切り立ち、進むと退路はありません。絶対に登れるという自信がある人だけが進めるようです。

近くで見ると本当に迫力が凄い。すべての滝が見事な大きさで、水線沿いは突破できそうにないのでF1~F3は右岸のスラブを登ります。傾斜が寝てるし落ちないだろうという事でロープは付けませんが、万が一落ちたら一発アウトの高さ。
ルーファイが大切で、下手な所を登ると詰みだと感じました。
しかし景色がいい(笑)

スラブを登りきると、上段のF4~F6が待ってます。このF4、傾斜が緩いので簡単に突破できるかと思いきや、超細いクラックがあるだけのスラブでとにかく危ない。念のためロープを付けましたが、全く杞憂ではありませんでした。
次のF5はけっこう簡単に登れて楽しい。

そして最上段のF6に到着しましたが…これは凄い。垂直の50M大滝が身構えており、一体どうやって突破するのか悩むところ。右にちっちゃく見えるのがダイチです。
一瞬「水線突破できるか?」と思いましたが、雪解け水を浴びながらこの大滝を登るのは無理だと思いました。
セオリー通り、右壁側のルンゼから登ることにしました。

とりあえず相方がリードしたいとのことなのでお任せしました。
右の斜面を登っていき、距離を稼いでから濡れた岩を登り始めます。が、どう考えても登攀ラインがおかしい。滝の近くのルンゼを目指す必要があるのに、途中で詰む未来しか見えない。
ストップをかけて選手交代しました。

次は私がリード。一度滝壺まで戻り、すぐ隣の泥斜面を登ることにしました。プロテクションが少なくかなりシビアな登攀になりますが、ルンゼまで入ればプロテクションも取れるだろうという作戦です。
ただ今回、軽量化の為にクライミングシューズを持ってきませんでしたが、これがいけなかった。スタンスは泥にまみれた細かいものばかりで、沢靴だと完全に乗り切れない。
プロテクションも思ったより少なく、泥を掘って足場を作ったり、リスを掘り出したりして慎重に登りました。こういう工夫が沢の面白い所ですが、命がかかっているのもまた事実です。フリーと違って落ちたら普通に死ぬ可能性もあります。

何とかルンゼに取り付きましたが、油断してた。ホールド、プロテクション共に決して良くはない。親指くらいの灌木で支点を取り、ハーケンを打って何とか凌ぐ。そのまま50Mのロープをありったけまで伸ばし、途中の怪しい灌木とクラックで終了点を作りました。我ながらよく登りきれたなと思います。
すごい高さでハンギングビレイ。

相方に交代し、ルンゼを登ってもらいます。ここからはグレードがⅢと少し下がるので、難しくはないはず。途中にクラックもあり安心だが、詰めの岩が脆く頭上に大量の岩が降り注ぐ。
とはいえ落石は明後日の方向に飛んでいくので、特に危険ではありませんでした。

更に簡単なヤブを1ピッチ繋いで落ち口に出ました。今年は雪が少ないので、恐らくここが最大の難所。難しい所をリードできて、感無量でした。滝の上からの眺めは素晴らしいものでした。

などと難所が終わったのも束の間、下部ゴルジュが見えてきました。
実はこの沢、梅花皮大滝の後に難所のゴルジュが3つもあります。そう、戦いは始まったばかりでした。
記録によるとこの下部ゴルジュは巨大な残雪に覆われており、それをどう突破するかがキモだそうです。10年前の記録だと100M近い巨大な雪の塊があったとか。
が、今年は何もありませんでした。去年の冬は雪が少なく、夏は記録的な猛暑。今年の冬は更に雪が少なく、夏もそこそこ暑い日が続いてます。

雪が少ないからと言って喜んでられません。去年遡行した沢は雪渓がなくなったことで謎の滝が出現し、大目玉を食らった記憶があります。
果たして今回は難しくなるのか、簡単になるのか。

幸い後者でした。雪渓が消えた下部ゴルジュはフリクションの効きやすい花崗岩で、クラックも豊富。かなり警戒して突っ込みましたが、肩透かしを食らった感じでした。
それでも落ちるとシャレにならない高さなので、慎重に行動します。

思ったよりアッサリ下部ゴルジュを突破でき、すぐに中部ゴルジュの15M滝に到着しました。
ここで相方と相談。まだ15時ではあるが、ある意味そこそこの時間。中部ゴルジュの入り口には大量の薪が落ちており、快適な砂地になっている。そして天気が良く、前回のように増水の心配もない。
今夜はここでビバークすることにしました。

乾いた薪で焚き火を起こし、パーリーナイトが始まりました。こんな高難度の沢ですが、食の楽しみは怠らないと決めています。今夜も生米を炊き、直火でベーコンを焼きました。やはり肉と米は正義。疲れた体に染み渡ります。
今回は少量ですが、ウィスキーも持ってきたので乾杯しました。
この夜は雨が降る様子もなく、満天の星空が見えました。念のためツェルトを張りましたが、気持ちのいい夜で焚き火の隣で寝てしまいました。

寒さで目が覚め、焚き火に薪をくべる。就寝が早かったからか、たっぷり9時間睡眠。全回復です。
火に近付きすぎて靴下が燃えてました。
早朝4時から焚き火を眺め、コーヒーを飲んでから朝食。こんな閉塞的なゴルジュにいるのに、とても穏やかな気分です。
山で朝日を迎えるって素晴らしい。

明るくなると共に出発。大滝が終わったとはいえ、まだゴルジュが2つ残ってます。どれだけ時間がかかるか分からないので油断できません。
15M滝を左岸のクラックから超え、まずは難所クリア。

朝日に染まる中部ゴルジュが美しい。高度感のある右岸のガレをトラバースし、連瀑帯を超えます。
この中部ゴルジュの完全突破は誰も成し得たことがないそうですが、今回は無事沢を突破するのが目的です。最善策で行動することにします。

中部ゴルジュ最後の20M滝はハングしており、超えるのは不可能に近い。仕方ないので左岸の枝沢に入って大高巻きします。上まで上がると高度感が凄い。
高巻くルンゼもそこそこ悪く、沢に戻るのも確実なルーファイが必要。決して簡単ではありませんでした。

何とか沢床に戻ってきた所で、最後の難所上部ゴルジュの入り口です。
ここは暗くて狭いゴルジュですが高巻く事ができず、ゴルジュの中を突破するしかないようです。

数メートルクラスの滝がかかる程度でしたが、この3M滝が滅茶苦茶悪い。右も左もハングしており、そこから超冷たい雪解け水が噴き出しています。
ゴルジュ両岸はツルツルで、水を浴びながら突破するしかありませんでした。
ここで沢屋の奇策、ショルダー発動。
ダイチを踏み台にして私が水を突破し引き上げる作戦でしたが水流が凄まじい上になかなか良いホールドがない。
雄叫びを上げながら登り切った時には嬉しさと共に寒さで震えが止まりませんでした。

次に登場したのはこれまた正面突破できない10M滝。
左壁を登るようですが、クライミングシューズを持ってきてないので沢靴で登るしかないようです。
幸い良いクラックが真ん中を走っているため、プロテクションは大丈夫そうでした。相方がリードしたいということなのでお願いします。私はさっきの3M滝で疲れました。

フォローで登ってみるとホールド豊富でとても面白い。さすが花崗岩といった所で岩は堅く、フリクションも抜群でした。
それよりさっきの滝行で体が冷え切っており、ビレイしてる時が寒くて寒くて仕方ありませんでした。
登り切ったら休憩したかったですが、とりあえず日当たりのいい所まで歩く事にしました。動いて温めないとヤバい。

その先の20M滝の前が日当たりが良く、休憩にはもってこいでした。
これで大滝と3つのゴルジュを突破。とりあえず肩の荷が下りた感じでした。
どれだけ時間がかかるのかと思いましたが、この時点でまだ9:30。かなり余裕ができました。
振り返ると今まで突破してきたゴルジュ、そして朝日連峰の絶景が見えました。
晴れてるって素晴らしい。

最後の難所15M滝を左から巻くと、もう難しい所はありませんでした。
水が切れる所でカールになり、少し歩くと登山道に出ました。
まさに快晴。何もかもが最高の山行でした。

今年は仕事が忙しくなかなか沢に行けませんでしたが、梅花皮沢は今年の最終目標でした。その憧れの沢を、心残りなく遡行出来て大満足でした。
この時点で11:30。かなり早い。

下山は石転び沢から。私はゴーロ歩きが得意ですが、思ったより時間がかかり大変でした。疲れ切った相方を待ちながらゆっくり下山。

車に戻ると18時だったので、飯豊山荘や梅花皮山荘のお風呂には入れませんでした。
道の駅関川まで戻り、一風呂浴びてから「食事処山里」で夕食。値は少々張りましたが、鶏の半身を使った唐揚げ定食が疲れた体に染みました。

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