島道川 滝の内沢

頸城山脈の滝の内沢を遡行した時の記録です。
頸城はヤブ山が多くハイキングでは目立った山はないものの、独特の地質と降雪により深い谷を抱えている珍しい山域です。日本海に面している頸城は、何気に家から近かったりします。
去年は海川不動沢を遡行したのですが、アレも厳しかった….

今回は豊橋市の友人ダイチと2人。現地近くのコンビニで待ち合わせし、パッキングしてから出発の予定でした。
が、現地は土砂降り。雨予報が出てなので水量が少ない沢にしましたが、それにしても降りすぎ。

どう考えても中止だろうと思ったが、一旦雨が止んだので最初の40M滝まで行ってみる事に。
意外と視界が良く、何とかなる気がしてくる。大きな堰堤を2つ超えた先に大迫力の40M滝が姿を現しました。

何という大迫力!大きさもそうだが、斜度がヤバい。去年はコレを登ったパーティの記録があったが、信じられない威圧感である。確かにクラックが所々にありプロテクションは取れそうな気はするが…今日はあまりにもコンディションが悪い。
行くにしても巻くしか選択肢がないので少し戻ることに。

滝からほんの少し戻った所に急なルンゼがあり、ダイチがここを登って滝の上に出ると言う。どう考えてももう少し戻った所のヤブ尾根からの巻きだが、本人はヤル気満々。まぁここなら逃げることもできるので、好きにさせてあげましょう。
ルンゼを登り始めた直後、先刻を遥かに超える大雨。ダイチの顔に泥水が降り注ぎ、私の頭上にも大量の落石が。というか本流が大増水してきたのでちょっと退避する。割と本気で帰りたくなってきた。
後退しながら登り、土砂降りのなか1時間半かけて巻きが完了した。帰りたかったのに何とかなってしまうのが悔しい。
沢身からかなり上に出てしまったので、懸垂下降で降りる事にした。ロープが50Mで、どう見ても40Mくらいある。降りる場所をミスすると大変なことになるので慎重に。途中でピッチを切り、何とか下降できた。

休憩したのも束の間、辺りはゴルジュになり荘厳な滝が現れた。轟々と水を吐くその様子はまさに頸城の滝そのものである。
この6M滝は一見登れなさそうに見えるが、実は左壁にクラックがあり登れるようになっている。
出だしに木が引っかかってて本当に良かった。

カムはしっかり効くのでアブミをかけてスイスイ登る。
フローティングロープで荷物とダイチを引き上げ、しばらく歩くと次は5Mの滝。チョックストーンが挟まっており、普通には上がれないのでダイチに踏み台になってもらい、ショルダーで突破した。スリングで引き上げるが、冷たい水を思いっきり顔面に食らう。

体が冷えて休憩しようかなと思った所に、

なんか凄いのが登場。核心の15M滝である。
斜度は垂直以下だが、見ただけでハッキリ分かるくらいヌメる。完全に錆びた残置ボルトが数本あり、我々のリングボルトはあと1本。とにかく無駄遣いできない。巻き道もあるそうだがどう見ても良くないので、意を決して登ることにした。

全く信用できないリングボルトに体重をかけ、ハーケンを打ちながらエイドで突破。しかし途中で全くプロテクションが取れない所があり、フリーで飛び込んだ所で戦慄した。
ホールドが予想以上に悪く、滑ったら数メートル滑落。足下にあるのは決まりの悪いハーケンのみ。恐怖のあまり泣きそうになり、ダイチに助けを求めようとしたがどう見ても無駄である。ゆっくり立ち上がり、滑らないことを祈る。
立ち上がった所にリングボルトがあり、安堵した。

ダイチを引き上げると14:00。そこそこ良い時間だが天気も悪いし、こんなゴルジュの中でビバークするのは自殺行為。先に進むことにした。すぐに直登できない8M滝が登場。右岸を登るがさっきの15Mで疲弊していたので、ダイチにリードをお願いした。ホールドが豊富でフォローで登る分には楽しい滝。
懸垂で沢に降り、時刻は15:30。割と余裕がなくなってきた感じだ。

突然沢は狭くなり、樋状のゴルジュを泳いで進む。かなり疲れているはずなのに、こういう光景を見ると元気が出てくる。深い沢ならではの光景だ。
そろそろビバークしたいが、ある程度開けたところでないと危険すぎる。
本日最後の難関、ツルツルした5M滝にさしかかり、左岸から巻くことにした。ただ巻きも非常に悪く、碌なプロテクションがない。草にスリングをかけたり、リスを掘り出したりで、何とか安全確保ができた。
2人が登りきる頃には薄暗くなり、既に17:00を回っていた。

なんとすぐにテン場の二俣に到着。疲れ切った体を休めるために焚き火を起こし、タープを張る。いつもはモンベルの良いタープなのだが、今回ダイチに任せたら500円のブルーシートだった。まぁ寝れればなんでもいいんだけど。
写真を撮ってる余裕はなかったが、何とか寝床を確保できた。辺りには乾いた薪が大量に転がっており、焚き火には困らない。
夜にまた土砂降りとなったが、テン場が沈むほどではなかった。

しかし雨は夜も降り続き、雷の音が鳴り響いていた。気にしないことにして眠りについた頃、ポタポタと落ちる水滴で目を覚ます。その後も支柱にしていた木が倒れて顔面を強打。なかなか熟睡できず、早く雨が上がる事を祈った。
途中、増水した沢により焚き火が流れていった。

翌朝5時。天気は更に酷くなり、昨晩以上の大雨が降っていた。降りに降った雨で沢は更に増水し、斜面の上に撤退。先日の万太郎谷もそうだが、今年は増水被害によく会う年だ。かなりヤバい状況だが、このような状況にはもう慣れてきた気がする。少なくともこの斜面にいる限りは命の危険はないし、頭にマットを被って雨を凌ぎながら朝食を摂ることにした。
タープにしていたブルーシートは沢の藻屑と消えていった。

8:00。凄まじい雨は一旦止み、また雨が降り出す可能性は十分ある。沢の水は引ききっていないが、ここで撤退することにした。少なくとも、この状態で上部ゴルジュに突っ込む選択肢はない。
姥滝の左岸にある枝沢を詰めるとピークに出ることができ、そこから更に尾根を下ると林道に出られる。難しい沢だがエスケープルートが確保されているのはありがたい。

沢を詰め切ると急斜面の泥斜面を登る羽目になったが、ブナの森が広がるピークに到着。もはや熊の足跡くらいしかないが、贅沢は言ってられない。とはいえここまで来たら雨が降っても増水の危険はなし。ひとまず安全圏という所だ。
ピークからは集落が見え、スマホの電波も入る。
ここから更に酷いヤブ漕ぎになったが、まだ午前中で時間はたっぷりあった。

1時間程ヤブを漕ぐと、林道というか立派な車道に出た。どうやら工事をしているらしく、車を回送することはできそうにない。とはいえここから入渓点まで徒歩30分程度。なかなか酷い山行だったねとか笑いながら歩く余裕はあった。
どんな酷い状況も、無事帰ってこれたら良い経験になる。

下山後、とりあえずお風呂に入りたかったので道の駅「うみてらす名立」に立ち寄り、汗を流した。海鮮丼を頬張りながら降水量を見返すと、15ml/minの激しい雨が降っていたらしい。無事帰ってこれたが、やっぱり止めとけばよかったと少し思った。


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