春の飯豊連峰、門内沢

鳥海山の翌日、疲れたあやちゃんを連れて飯豊山脈に向かった。
またしても遅めの出発で、到着は9時。
この時期は梅花皮荘から飯豊山荘に続く道がオープンしていないので、1時間程歩く事になる。

まだ雪が残る道路を歩き、飯豊山層に到着。
前回は石転び沢をピストンだったが、今回は1泊なので梶川尾根を登る事にした。どちらも小屋までの距離は同じだが、先に標高を上げた方がスキーは楽だからだ。

予想通り登山口に雪はなかったが、イワウチワとカタクリの群生が我々を出迎えてくれた。雪国の春ならではの光景が美しい。

板を担いでひたすら上がる。すぐに雪が出てきたのでスキーに履き替えるが、クラックがあるので結局脱ぐ。というか、登山道が出てるのでそっちの方が歩きやすい。

普通に歩いてるだけだが、あやちゃんと距離が開いてきた。単純な体力というよりは、「慣れ」だろう。春山のような地形変化が多い場合、クラックの出現や板の脱ぎ履き、藪漕ぎ、時にはアイゼンを履いてシートラも必要になる。自分の技量と限界点の確認を試されるのが春の雪山だ。寒さを除けば厳冬期の方が簡単な場合さえある。

一昨年滑った石転び沢が見えてきた。コルから落とすシュプールが3本見える。天気がいいので誰かいると思ったが、他にも滑っている人がいて少し嬉しい。
午後になるとシュプールを埋めるように雪崩が起きていた。いつも起こる、雪庇落下の点発生雪崩だ。

Co1100Mからはひたすら雪道となった。斜面が急とはいえ、シールが使えるのはありがたい。何より、雪が緩んで歩きやすいのだ。ところどころ急で板を脱ぐ場面があったが、シートラも面倒なので板を持って歩く。

17:00、梶川峰に到着。日が傾きかけているが、まだ明るいので全然問題ない。陽が長いのは、春スキーの一番良いところだと思う。あとは夕陽を浴びながら、緩い斜面を歩けばいい。

山吹色に染まった北股岳がカッコいい。
北面に岩が露出しているせいか、飯豊山より目立つ存在だ。
この下が門内沢なので、明日滑るラインをオブザベーションしておいた。

18:15、門内小屋に到着。先客が1人いたのでお邪魔させて頂いた。早朝に出て石転び沢を上がり、正午くらいには着いたので小屋の掃除などをしていたらしい。ありがたい。飯豊の小屋は、利用者の愛によって維持されているのだろう。人で賑わう山とは違った良さがある。

3人で山の話をしながら夕食にし、先客の男性は3時頃出るらしいので、日没と共に全員が眠りについた。
二王子岳の向こう、日本海に沈む夕日が美しかった。

翌朝、日の出と同じく4:30に目が覚める。我々は比較的急がないので、お湯を沸かしてコーヒーを嗜む。あやちゃんはイビキをかいていて、起きる気配はない。さすがに6時に叩き起こした。

朝食後、全ての荷物をデポして北股岳に向かう。登山道はほとんど出ていたが、雪庇の上をスキーで進む。帰りが圧倒的に速いからだ。山頂からは飯豊山や朝日連峰の眺めが素晴らしかった。

門内沢は大きい。どこを落としても面白そうだが、北股岳からのドロップはクラックが多いのでやめた。連日のスキーで仕上がった体は刺激を求めていたが、門内小屋から少し胎内山へ戻った小雪庇からドロップする事にした。

最初のクラックを飛ぶと、あとは少し固いザラメ。大回りのターンを描きながら、気持ちよく滑る事ができた。途中のハイマツ帯でワンピッチ切り、更に落とす。ここから傾斜が緩くなるせいか、落石が目立った。うっかり踏むと、夏に買ったばかりの新車にえげつない傷が入る。細かいターンを切りながら避ける。ここからは危険はないのでパーティーラン。

石転び沢との分岐まで進む。登山者が2人、これから登るようだ。この辺りから急激に板が走らなくなった。確かに雪は緩んでいるが、何かおかしい。歩くより遅いんじゃないかと思うレベルだ。

全く走らない板にイライラしながら、登山道までたどり着いた。気温が上がってきたが、流水が気持ちいい。顔を洗って仕切り直しだ。

板の裏を見ると、真っ黒い重油のような物がこびりついていた。門内沢にはブナの実は落ちていなかったので、ブナ油とは違う何かだろう。帰宅後調べると、「雪藻」という植物?らしい。スクレーパーで削ってからガソリンで取り除いた。

何にせよ、この先はスキーを使わない。アプローチシューズに履き替えスキーを担ぐが、板が木に引っかかって非常に歩きづらい。段差を降りる時もテールが当たるので、慎重に歩く。

1時間半程で飯豊山荘に戻ってきた。往路もそうだが、誰かと一緒に歩くと早い気がする。
平日になったので除雪作業が入っていた。この道路がオープンするのは6月。まだまだ先である。
アプローチの長さから、もう二度と来るかと思っていたが、慣れると楽しいルートだった。また来たい。そう思えた。


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